Release: 2022/06/26 Update: 2022/06/28

【祝】安里川産イワツキクロダイ。国内2例目の発見として論文になる。

こんにちは。モソです。

最近更新サボり気味になって申し訳ないです…

さて、タイトルについて安里川で釣れた「イワツキクロダイ」らしき魚が、国内2例目のイワツキクロダイとなり、論文が掲載されています!

なお、管理人も協力者として名前を掲載いただいています。

イワツキクロダイとは?

2006年に台湾南部で獲れた新種のクロダイが、2017年に鹿児島県の定置網で捕獲され、国内初確認→イワツキクロダイという新称が提唱(≒命名)されています。名前はタイの研究者の先生に由来しているとのことです。

関連する論文(外部サイト、PDF資料):http://iap-jp.org/isj/pdf/publication/pdf/64/6402_107.pdf

沖縄本島や久米島でもイワツキクロダイらしき魚がたびたび釣れていたのですが、釣り人の間では八重山諸島に生息するナンヨウチヌとして認識されていたため、それが新種のイワツキクロダイという魚ということに気づいていませんでした。

そもそもクロダイの仲間の見分け(同定)は結構難しく、また、汽水域(のかなり塩分濃度の低いエリア)で釣れていることもあり、メジャーな魚ではなかったことがあげられます。

イワツキクロダイの事を知ったのは、琉球大学大学院で魚類を研究されていた、おれんじうさぎ氏の講座を受けた事からでした。

ボラを専門的に研究されている先生で、講座の中でボラの同定の方法(たいへん難しい)や標本の重要性を学ぶことができ、また、「沖縄本島でも時々ナンヨウチヌが釣れる」という雑談から、新種のイワツキクロダイの可能性を知ることとなったのです。

安里川で獲れたイワツキクロダイ(釣ったのは別の方)

もしも、イワツキクロダイらしき魚が釣れたら標本を提供すると約束し、令和3年12月25日、那覇市のさいおんスクエア内でチキング(フライドチキンを餌にした釣り。)で釣られた個体を提供。

この個体が国内2例目のイワツキクロダイの標本となったのです。※注:釣ったのは管理人モソではありません。

イワツキクロダイらしき魚は以前にもたびたび釣れていますが、写真のみの記録では「イワツキクロダイと見られる」ということにとどまってしまうようで、標本の重要性を感じました。

なお、2006年に久米島のアングラー、ぼびぃ氏が「たらこペンシル」でイワツキクロダイらしき魚を釣っています。

大学の水産学科卒でもある魚マニアのぼびぃ氏。釣ったイワツキクロダイらしき魚(※当時はナンヨウチヌとして認識していた)を標本用に研究者に送る予定だったものの、台風で停電し魚が腐ってしまい、送ることができなくなってしまったとの事。

もしかするとイワツキクロダイの発見者は、ぼびぃ氏になっていたかもしれませんね。

なお、ぼびぃ氏が釣ったイワツキクロダイはWEB魚図鑑でも紹介されています。

イワツキクロダイの見分け方

イワツキクロダイは他のクロダイよりも丸みがあるように見えますが、形自体は同定(見分け)の決め手とならないようです。どちらかといえば、他の沖縄産クロダイに比べて鱗が大きく見えることが特徴に思います。

沖縄本島や久米島など周辺離島で釣れるナンヨウチヌっぽい鱗の大きなクロダイは、イワツキクロダイの可能性が高いと覚えておくと良いかもしれません。

より確実に同定をする方法は、下記の3つのポイントがあります。

・背びれの5番目の棘条(とげ)の下の部分ウロコの数が3.5枚。ミナミクロダイやオキナワキチヌは4.5枚。

・しりびれの軟条(やわらかいとげ)が明るいグレーか白。ナンヨウチヌは軟条が黒い。

・頬の鱗の数(頬鱗列数)が3~4枚。八重山諸島に生息するナンヨウチヌは6~7枚。

なお、頬の鱗の数は実物でも結構わかりづらいとの事で、それらしき魚が釣れた時は軟条の色なども見て総合的に判断するとよいかも、というアドバイスをいただきました。

イワツキクロダイの生態を知るために

イワツキクロダイは認知されてまだ日の浅い魚であり、謎の部分がまだまだ多い魚でもあります。

国内2例目の標本となったイワツキクロダイはまだ小さい個体だったため、当初考えられていた「台湾から黒潮で流された」ではなく、沖縄で再生産(卵を産んで増えること)の可能性もあるとのこと。

また、国内2例目の標本となったイワツキクロダイや、他のイワツキクロダイらしき魚が釣れている場所は、かなり塩分濃度が低いという感触もありますが、内湾でさかんに行われているチヌ狙いの釣り(フカセ釣りやぶっこみ釣り、ルアー釣りなど)にも混じる可能性があります。

ナンヨウチヌと同じくアグレッシブな性格のようで、他のクロダイの仲間より活発にルアーを追うという釣った人の感想もあります。ミノーやスピナーベイトなど、他のクロダイがあまり好まないルアーにも反応しているようです。

生態を知るための決め手が標本となるため、さしつかえなければ、ジップロックなどに水と一緒に入れて冷凍保存し、ご連絡ただきたいとのことでした。

研究開発の分野においては「産・学・官(または産・官・学)」が共同する手法が知られてます。

日本初確認のイワツキクロダイは「産」である漁業者の協力で発見されましたが、漁業者の手が届きにくい河川内で多く見つかっています。

今回は、「民」である釣り人も研究に加えていただいた事例となり、今後のイワツキクロダイ研究も釣り人の協力が不可欠になるかもしれません。

学者さんと釣り人が積極的に情報交換をすることや、釣り人が目利きになることで、別の新たな発見が生まれるのではないかと期待しています。

国内2例目のイワツキクロダイの論文はこちらから

沖縄島から得られた日本2例目のイワツキクロダイ

https://www.museum.kagoshima-u.ac.jp/ichthy/articles.html