Release: 2019/05/14 Update: 2019/08/07

釣りの安全とマナー勉強会(後編)

こんにちは。モソです。

5/12(日)に開催され た「釣りの安全とマナー勉強会」の後編をお送りいたします。 前編は下記リンクよりどうぞ。

【禁漁について】

赤:キーストンというエギメーカーのテスターをしており、県外の釣り大会にも招待される。

 その1箇所の鹿児島の甑島というところでは、約1ヶ月の禁漁期間を設けている。禁漁明けに行政、漁業者、アングラー(釣り人)、島ぐるみで甑烏賊釣り大会を開いている。

 二年連続招待されて感じたのは、イカ釣り大会が地域活性化につながっている。前夜祭も小学校の体育館を借りて、地域の方が名産のキビナゴを振舞ってくれる。小学生の図工の時間に、イカ釣りをテーマに絵を描いて、前夜祭で表彰するなどしている。非常によいことだと思う。

 単なる禁漁では各所から反発もあると思うので、モデルとなる地域を作って観光につなげるなどして、経済効果を含め皆さんと力をあわせてできないかと常に思っている。

 沖縄でもやりたいが、前に進もうにも、どうしていいかわからない。

【魚が減っているという実感】

ボ:禁漁区、禁漁期間の前に、皆さんの中で最近魚が釣れなくなってると思う方はどのくらいいますか?

(8割くらいが挙手)

 魚が釣れなくなった要因は魚が環境の変化などもあるし、魚をみんな持って帰ってしまうことも原因になっていると思う。禁漁区、禁漁期間は魚を増やすためには有効な方法と思う。

 アカジン、マクブについて体調制限が、沖縄のほぼ全域で漁業者に対して指示されている。釣り人は適用されていないが、釣り人も協力していくことは、資源保護のためにも必要なことだと思っている。

沖縄県水産課より

 カンモンハタなど居付きの魚も、根こそぎ釣るとその場所からいなくなってしまう。残しておけば増えるだろうし、魚種によっては成長の遅い魚もいる。 

ボ:全部獲ってはいけないということではなく、魚種によって、この魚は持ち帰りは1匹までにしようとか、そのような取り組みが必要なのではないか。

【ライセンス制度】

サ:釣り仲間の間でもよく話題に上がる。法改正なども必要になりそうなのですぐにどうこうという事ではないとは思う。釣具屋さんが一番困るかもしれない。

ボ:後ほどディスカッションの時間を設けるので、皆さんの意見も伺いたい。

【海釣り施設について】

※沖縄には海釣り公園(海釣り施設)がない。

サ:ツイッターで情報を貰ったが、国土交通省(沖縄では沖縄総合事務局)管内の港湾では、できるかもしれない。

港湾における釣り利用一覧(H31.2.4時点)  国土交通省

http://www.mlit.go.jp/common/001272462.pdf

 ちなみに、「港内釣り禁止」とある場合の「港内」の定義は、海図に示された”港区(こうく)”を意味する形になる。堤防の外側の航路なども港に含まれるという考えになる。

 国土交通省管轄の那覇港の場合は、大嶺岬(那覇空港沖)から浦添市の亀瀬(カーミージー)あたりまで。いわゆる一文字防波堤も那覇港の中になる。

注:那覇港内には”那覇埠頭””泊埠頭””安謝新港埠頭がある”

 また、中城湾港や金武湾港もある。中城湾港は中城湾全部になる。その中に海釣り施設を作るということは可能かもしれない。

 海釣り施設の中に教育機関を作り、(安全やマナーの)講習会のあとライセンスを発行。施設を利用するにはライセンスが必要ということもできそう。

G:過去に月刊つり人(老舗の釣り雑誌)の編集長と飲む機会があり、沖縄県で海釣り施設を作ることができないか話になった。

Gu(G)さん登場

フカセ釣りをメインに様々な釣り人をつなぐアングラー。子供たちへの釣り教室などにも力をいれる。悪い人の会会長。

https://warui6022.ti-da.net/

 編集長は何度も来沖して調整に来たが、海辺の環境の問題や漁師の反対があり、何も話が進まない、難しいなということだった。

 月刊つり人の編集長の影響力は大きいと思うが、何らかのアクションを起こさないと難しい。

【信頼関係の回復】

サ:海釣り公園の件も、釣り人の信頼の問題が大きいのではないか。釣り人の信頼回復について伺いたい。

友:各々がどのくらい意識を持つか。3年ほど前からブログで釣り禁止を書いて、あと5年持たない気がする。

 漁港が禁止になれば隣の漁港へ釣り人が移ってしまう。そこでまた問題が起きる。それがつながるとすぐ釣り禁止になる。みんなで一緒に動かないといけない。

 本島が釣り禁止になれば釣り人は離島に向かう。

 新しい話では、座間味が釣り禁止になるという話が出ているようだ。行政と住民の間で「子供達が釣りできなくなる」ということで、禁止となっていない状況。

座間味の海

 これ以上ひどくなると座間味は釣り禁止となり、その流れで隣の渡嘉敷も釣り禁止になってしまう。

ボ:信頼回復の事例として、行政や観光と結びつけることで回復はできるかもしれない。

 ジャンルは違うが、「鉄オタ(鉄道オタク)」の世界でも、マナーの悪い人が問題となっている。駅員さんとトラブルになったり、撮影のために私有地に入るなどして問題となっている。

 山口県の山口号というSLが走る路線では撮影禁止となったが、憂いたマナーの良い撮り鉄(鉄道写真愛好家)が地元住民と協力し、注意喚起を行ったり環境整備を行った。

 地元の人たちも鉄道マニアからのお金が落ちなくなるので、互いに協力して解除させたという歴史がある。現在は撮り鉄のマナーがよく、マナーの悪い人が入れなくなっている。釣りも同じことで、マナーの悪い人が入れない環境作りはできると思う。

キ:コミュニケーションにも関わるが、与根漁港が禁止になった時に豊見城市役所に確認したことがある。

 漁協から役所に申し入れで釣り禁止となったが、役所的には釣り人の清掃活動も把握しており、釣り禁止を解除したいという気持ちもあるとのこと。

 みなの行動で釣り禁止解除ということも可能かもしれない。取り組みをしていきたい。

【動画について】

サ:啓発動画を作れないかと考えている。誰でも見れる3~5分の動画を作れないかという事をつぶやいた事からこの勉強会が始まった。突き詰めて夏休み前頃までに作れないかと思う。どうやって作るかは全く考えていないが、皆さんのご協力をいただければ嬉しい。

 動画企画に参加できなくても、自発的に動画を作るとか、勉強したことをSNSやブログに書くことでも大きい効果がある。

 集まってやることだけではなく、各々が情報発信することも大きい。

 本日は釣具店も参加してくれており、釣具店も取り組んでくれたら、信頼回復の面でもよいと思う。

【釣具店より】

・釣り以外のゴミが捨てられるので、外にゴミ箱を設置していないが、ゴミを拾ってくれる釣り人もいるので、そのような方はレジで言ってもらえれば対応している。他に何かあれば相談してほしい。

・何ができるかを即答できないが、釣具屋でも協力できることがあれば、私からも促してみるのでよろしくお願いしたい。

・卒論で釣りのゴミ問題を取り上げており、参加している。店舗として出来ることは少ないかもしれないが、たとえばパッケージ処分などをやっている。

 個人的な意見としては、(卒論の調査の結果)ゴミの内訳としてタバコの吸殻が非常に多いと感じる。

捨てられている吸殻

 某釣りプロがタバコのポイ捨てをして炎上しているが、普段クセとか何気なくやっていることを釣り場でもやってしまう。

 釣り場だけ捨てないのではなく、普段から吸殻を捨てないとか、喫煙所で吸うなど心がけしてほしい。

サ:中高生に強く言いたいが、タバコは吸わないほうがいい。

 未成年喫煙は補導の対象になり、吸殻を隠すために、側溝などに捨てざるを得ない。それは海に流れる。

 これがクセになるとポイ捨ての意識が希薄になる。タバコ代で釣り具を買ったほうがいい。

【ビニール袋の削減を】

G: 小さいビニール袋はいらないし、パッケージは釣具店で処分できたほうがいい。

餌釣だからルアーだからということではないが、フカセ釣りに関しては、釣具店の中で配合餌を配合できる場所がほしい。配合餌のビニールがよく落ちているのを見る。

 県外の釣具店ではコンクリート等を混ぜるケースとスコップがあり、餌を混ぜる場所、バッカンを洗う場所も作られている。沖縄の釣具店でも対応できないか。

釣具店:(店舗によっては)貸し出ししているので、必要ありましたら声かけてほしい。

具志:餌釣の人も流しているが、それ以上に集魚材の色が残ってしまったりしている。タワシを持っている人もいる。

 皆、かっこいい釣り師になってほしい。

【伊江島・釣り禁止の理由】

参加者:漁協組合員です。

 伊江島での釣り禁止については、ゴミも多少あったものの、一番の原因は船や漁業への被害である。ロープに仕掛けをひっかけたり、スクリューに仕掛けが絡まる事例も増えたので、釣り禁止となっている。

 以前は暗黙で釣りをさせていたが、去年から被害が強くなった。

 カーエーのポイントが船のバースになっており、仕掛けに大きなエイが掛かることもある。

 そのエイを陸揚げするために、船からモリが持ち出された。船長がモリがない事に気付かずに出漁し、パヤオまで行っても漁にならずに戻ってきた事例がある。我々が獲るマグロのサイズが20~50kgと大きく、モリがないと漁にならない。

 モリだけではなく、タモや道具の盗難も発生している。

 私は船のスクリュー周辺に釣り糸がかかり、シーリングが破れ修理に9万円かかった。出漁できなかった1週間で70万円ほどの損害が出た。

 組合の中では、釣り人がやった、誰がやった、前日に誰が居たとなどと、犯人扱いしたくないので、釣り禁止にしようという話になった。

 釣りダービーの時にはバッカンの件もあったが、場所取りのためにオモリなしで打ち込みっぱなしにしており、これがスクリューに絡まったこともある。これは大きな問題になった。

 マナーのよい釣り人も伊江島に訪れてくれて、ユーチューバーの人たちも紹介してくれた。島が荒されるという心配もあるが、こういう人はルールやマナーを守ってくれていると思う。

 堤防へ乗り合いで渡る時も、お互い気を配るのでマナーが良いが、ゴミやマナーを守らない人は一人で来る場合が多い。

 組合の中でも皆が釣りをさせたくないのではなく、させたい人もいるのだけど、トラブルが起きると犯人扱いが始まるので、釣り禁止になってしまった。

 青年部としては釣り好きが多く、カーエーが釣れるので、皆釣り禁止にすると弊害も出ている。

 先ほど、一度釣り禁止になれば解除することは難しいという話もあったが、釣り人がマナーを守り理解が進めば、すぐに釣り禁し解除になると思う。

 理由としては、伊江島は民泊が盛んで、修学旅行生などに釣りをさせたいというのもある。民家の人からも釣り禁止に対して苦情が来ているのだけど、今は我慢している。

 自分でも協力できる事があれば協力したい。

【船は右側通行】

サ:貴重なご意見、ありがとうございます。

 私も遊漁船業の経験があるが、船の交通ルールはあまり知られていない。

 船は右側通行で、港則法で「港の入り口付近では、右側の堤防にできるだけ近づいて航行する」というルールがある。釣り人に近づいて嫌がらせをしているわけではなく、法律に従って航行している。

港則法 第十七条 船舶は、港内においては、防波堤、ふとうその他の工作物の突端又は停泊船舶を右げんに見て航行するときは、できるだけこれに近寄り、左げんに見て航行するときは、できるだけこれに遠ざかつて航行しなければならない。

e-Govより

 それを「船が嫌がらせをしている」と勘違いして釣り人が嫌がらせをすると、スクリューに糸が絡む、シーリングやギアを破損するなどのトラブル、最終的には釣り禁止へと繋がってしまう。

 船は財産であり、船が通るときはルアーだろうがブッコミであろうが仕掛けを揚げる。仕掛けを上げたことをアピールできるなどすると、さらに良いかもしれない。

【ファーストエイドキットの携行を!】

参加者: 私は山岳部にいて、命に対して厳しく教えられた。釣りも海や川という自然の中で人間は歯車の一部で、すごく小さな存在でしかない。

 釣りに関しては、自然の中でどう命を守るかという認識が足りないように思うことがある。皆さんに釣り人の命について疑問を投げかけたい。ライフジャケットもだが、絆創膏を持っているか?

(殆ど持っていない)

ボ:絆創膏やトゲ抜きなどがセットになった、ファーストエイドキットを持っている。皆さんの中にはウェーディング(水の中に立ち込む釣り)などを行う人も多いと思うが、その時に怪我をすることもある。

参加者:皆さんも是非ファーストエイドキットを携行してほしい。

【バーブレス(返しなし)フックの有効性】

 なお、釣りで一番多い怪我は針で刺すことではないかと思うが、返しがある釣り針と、バーブレス(返しがない、または潰している)フックだとすぐに抜ける。怪我防止の観点からもバーブレスフックを勧めたい

【撒き餌の取り扱いについて】

参加者:昨日、東村の沖磯に渡った。前日の撒き餌が大量に残っており、水くみバケツで30回ほど流すところからはじめた。そのおかげで、朝一番の良い時間を逃がすことになった。

 渡し船(遊漁船業)はお金を貰って磯に渡すだけが仕事になっている印象がある。業者が指導することも、釣り場や環境保全につながると思う。

 撒き餌は使いきれないと余ってしまう。余ったものを海に捨てる人もいるが、あまりよくない。私は持ち帰って再利用するように心がけている。

 モラルの問題で一人ひとりができることは小さいかもしれないが、沖縄県全体に広がれば大きな環境保全に繋がると思う。

サ:貴重なご意見ありがとうございます。

 ちなみに補足すると、沖縄県漁業調整規則では、一般の人が使ってもよい漁具が定められている。たとえば竿釣り、手釣りはOKだが、集魚灯は使えない。発射装置のないモリはOKだが、水中銃はダメなど。これも沖縄県水産課HPで掲載されている。

https://www.pref.okinawa.jp/site/norin/suisan/index.html

 以前は水質汚濁や乱獲防止のため、漁業調整規則で撒き餌の使用が禁止されていた。今はグルクン釣りなどの観光資源に資するため、撒き餌が使えるようになっている。

 また、あまり知られていないが「外国人漁業の規制に関する法律」により、日本国籍のない人は撒き餌の使用が禁じられている。外国人観光客がグルクン釣りをすると違法になるし、対馬などではこの法律を根拠に、外国人の撒き餌使用が問題となっているので、注意が必要かもしれない。