沖縄の冬の釣り。何が狙えるか?
こんにちは。管理人モソです。「しまんちゅコミックス」は沖縄の漫画/サブカル情報配信サイトですが、釣り情報も配信していますよ。
今回はあまり知られていない、「冬の沖縄の釣り」についてお届けします。
沖縄の冬も寒い

本土の方からすると信じられないかもしれませんが、沖縄の冬も結構寒いです。北海道出身の友人も「寒みぃ~」と言うくらいですから、寒いのでしょう。
「沖縄でダウンジャケット」というと笑われるかもしれませんが、寒い日は寒いんです。決してオシャレで着ているわけではありません。
沖縄の寒さの原因は「強風」にあります。小さな島ですので海風が吹き付けます。無風の日が少ないくらいす。
気温は明け方に10度を切ることが年に1回程度あるかどうか。数年前には霰が降り「沖縄初の降雪を観測」として話題になりました。私も霰が車のボンネットに落ちるのを見ましたよ。
気温はあまり下がらないですが、風と相まって「体感気温が低く感じる」と覚えておきましょう。
釣りでオススメの服装はフリースにゴアテックスパーカーの組み合わせです。ゴアテックスなら多少の雨も防げて風をシャットアウトします。ゴアテックス素材は少し高いですが1着持っていると損はしませんね。

やはり南国の魚は寒さに弱い
寒がりな沖縄県民と同じく寒がりです。気温10度を下回ると、浅瀬の魚が仮死状態になって打ち上がることがあります。
本土の魚と似ているようで別種のものが多く、たとえば後に記述するクロダイ類は「ミナミクロダイ」「オキナワキチヌ」などの南方系のクロダイです。沖釣りで狙うカンパチもヒレナガカンパチが多いです。
寒さが苦手な魚が多いので、釣りものはかなり限定されてしまいます。そんな沖縄の代表的な釣りはこちらです。
クロダイ釣り
本土でも「チヌ」と呼ばれ人気の釣魚です。「○○タイ」の名が付く魚が多いですが、正真正銘のタイの仲間は限られています。しかしながらクロダイも立派なタイの仲間です。

沖縄でも立派なターゲットになっており、餌釣り(フカセ釣りや三点浮き仕掛け)、ルアー釣りなどで狙われています。
かなり神経質な魚というイメージですが、荒磯を除いては殆どの海岸線に生息しており、時には河川の淡水域にも入ります。つまり釣り場所を選ばない釣魚といえます。
エサ釣りについてはあまり詳しくはないですが、私の友人からフカセ釣りを習ったさいに「(ポイントにもよると思いますが)チヌのフカセ釣りで無風というのはありえない」と言っていたのが印象的で、冷たい風を背に受けながら釣るのが冬のチヌ釣りだ、ということでした。
また、さらに特有の釣りとして「三点ウキ仕掛け」での餌釣りがあり、コマセ(撒き餌)を撒いてクロダイを寄せて釣るのはフカセ釣りと共通していますが、「濁りが入った浅瀬」を狙う釣りらしく、浅いところでもアタリが取れるように3つのウキを利用するということのようです。これは沖縄特有の釣りのようで、特に北風が正面から吹き付ける海岸線(名護市源河海岸など)がポイントになっています。特に海が荒れやすい釣りなのでライフジャケット、滑らない靴などはもちろん、安全管理に留意してください。
ルアー釣りに関しては20年近く前に地元の釣り雑誌社から、小型ポッパー(ポップクイーン50mmなど)を用いたトップゲームのDVDが発表され衝撃を受けましたが、その後はテキサスリグやジカリグなどの釣り方も開拓されました。
また、ルアー釣りはキャッチ&リリースの要素が強くなるため、都市河川で狙うターゲットとして脚光を浴びています。
都市河川での釣りは旅行などで沖縄を訪れたさい「どうしても釣りがしたいので、コンパクトロッドを鞄に忍ばせたい」という人向きのポイントです。
腕に自信がある人はテキサスリグやジカリグで狙うのも良いですし、カミツブシオモリとチヌ針、コンビニで販売されているフライドチキンをエサにした「チキング」もオススメです。

どの釣り場にも言えますが通行人や車の邪魔や危険にならないよう注意し、ゴミは片付けてください。特に釣り針の放置は危険です。
マゴチ
本土では「照りゴチ」と言われ、夏の日差しが強い時期の釣りものとして知られていますが、沖縄では年中狙えるうえ、むしろ冬場に大型が上がる傾向があります。私が70cmオーバーを2日連続釣ったのも、たしか2月のことでした。

沖縄のマゴチは背びれのトゲや尾の色(黄色みを帯びる)、大型化するなど本土のマゴチと明らかに違う特徴があり、分類上はマゴチとしてまとめられているものの、便宜上「ミナミマゴチ」と呼んでいるそうです(情報提供:漫湖水鳥湿地センターのIお兄さん。専門の先生に問い合わせてくれました)

沖縄におけるマゴチ釣りのメインはルアー釣りで、浅いところならミノーなどでも狙えますが、ジグヘッドリグやテキサスリグ、ジカリグなどが用いられます。

また、冬から初夏にかけて見られる「ミズン(方言名:ミジュン)」という小魚のまわりについている事もあり、釣ったミズンを餌にしたぶっこみ釣りなどでも狙えるようですが、一般的ではありません。
マゴチのルアー釣りに関しては拙著「ラッキーキャッツルアーフィッシングスクール」にて詳しく紹介していますので、よろしければご覧ください。
タチウオ
沖縄では周年どこかのポイントで狙えるのがタチウオです。

ただ、近年はかなり釣れなくなっています。以前はタチウオポイントがたくさんあり、1キャスト3バイトもザラにあったのですが、どこに行ったのでしょうか。

沖縄に住むタチウオは以前は「テンジクタチ」と分類されていて、寸胴でヒレと歯が大きい。ヒレが黄色っぽいなどの特徴があります。
また、本土のタチウオが昼間は深い海におり夜になると沿岸に寄ると言われますが、テンジクタチに関しては昼間は浅瀬の泥に潜るので、ポイントがわかれば昼間でもボコボコ釣れる魚でした。昼間釣れるポイントの条件は泥底であることと、小魚(ベイトフィッシュ)がいることが重要です。
タチウオに関しては一般的にルアーフィッシングが多く、特に「ワインド」と呼ばれる釣りが有効とされています。一方で、スイム系のソフトルアー(エコギア・グラスミノーLが最強だった)にジグヘッドの組み合わせて、だらだらと巻くだけでも十分に釣ることができました。ルアー釣りでは最も簡単なターゲットだと思います。
ジグヘッドに関して重要なのはフックが下向きについていることです。これはタチウオが「立ち泳ぎしながら、下方向から喰ってくることが多い」ためで、上向きのフックではアタリがあっても乗らないことが多いです。
また、沖縄の独特なタチウオ釣りとしては、投げ竿にサンマ一匹掛け、サンマには複数のトレブルフックという豪快な仕掛けで狙うこともありましたが、ルアー釣りが普及してからというもの、この仕掛けで釣る人は稀になったようです。
また、タチウオは沖釣りでのターゲットとしても脚光を浴びており、より大型化する「オキナワオオタチ」を狙ったジギングも行われています。
ミズン(ミジュン)
沖縄方言のミジュンがほぼそのままになった小魚です。

一般的に「イワシの仲間」と言われますが、英名は「ブルーストライプヘリング」で、ヘリングはニシンを意味します。とはいえイワシもミズンもニシン科の魚ではあります。
漁港や海岸線で黒い塊の群れを作り、主に小型のサビキ(チカサビキ)で釣ります。コマセ(巻き餌)は密度が薄い場合必要ですが、密集形態ではサビキのみを放り投げてフォールするだけで釣れます。

竿に吊るされた網を沈めて餌を巻く方法で一網打尽にするおばあちゃんがいますが、漁協の方とのことで一般の人が使えない漁具になっています(沖縄県漁業調整規則では漁業者以外の人は、手釣り、竿釣り、タモ網、投網などに制限されています)
ミズンは鮮度の悪いものはから揚げにしますが、3枚におろして刺身にすると美味です。

また、ミズンに混じってハララーやハダラーと呼ばれるトウゴロウイワシ(ヤクシマイワシ)が釣れますが、これらはニシン目の魚ではなく背びれが二つあるトウゴロウイワシ目の魚に分類されます。味はミズンより落ちますが、刺身が美味いという話もあります。頭や骨、ウロコが硬いです。

下:オニヒラアジ
マゴチの項でも紹介したとおり、ベイトフィッシュ(餌となる小魚)として有効で、朝夕に大規模なナブラを発生させます。

これをミズンにマッチさせたルアーで狙いますが、オヒニラアジやロウニンアジ、時にはイソマグロやヒレナガカンパチ。キハダマグロなども回遊します。ポイントには釣り人が集中し、場所取りが大変でトラブルも多いのが難点です。
エギング
20年ほど前に烏賊狙いの和製ルアー「餌木」を用いた「エギング」が流行り全国的なブームとなっています。ここ沖縄でもエギングが盛んです。というのも、餌木は薩摩から琉球列島にかけての漁師が開発したとの説があり、元々、餌木を用いた烏賊釣りが盛んに行われていたのです。
私の叔父はリールが高級品だった時代、コーラの瓶に糸を巻きつけて、カウボーイのように餌木を投げて釣る烏賊釣りをやっていたそうです。

薩摩においては 餌木を用いた烏賊釣りは武士のたしなみとされていたらしいです。賭けの対象となり、よく釣れる布(餌木には布が巻かれている)は誰にも譲らないとか、琉球から専用の木材を輸入していたこともあるとか。
ちなみに餌木用としてかつて用いられていた素材は、防風林としておなじみの「フクギ」や、餌木用の木を意味する「ギョボク」、よく言われるのが「コーレーグースー(唐辛子)」などです。現在の餌木はプラスチック製が殆どです。
コーレーグースーは一度使ったことがありますが、木材自体に辛味があり、目におかくずが入り地獄を見ました・・・

下:ハンドメイドの挽きエギ
エギング(しゃくり釣り)のテクニックについては様々なサイトや書籍、番組で紹介されているので多くを語る必要はないと思いますが、基本的なテクニック(カーブフォールやフリーフォール、○段シャクリ、ダートなどのくみあわせ)でいけます。
沖縄特有の条件としては、海が浅いので根掛り防止のため沈下速度の遅い餌木が好まれることや、15kgに達する「クブシミ(コブシメ)」が狙えること。シャクリを用いない昔ながらの「挽き釣り」を行う釣り人がわずかにいることなどです。

(筆者釣果)
また、エギングが流行る以前から挽き釣りが行われている烏賊釣りのメッカでもあるので、夏場から烏賊はプレッシャーを受けています。
なので思うほど釣果を上げることができませんが、より沖の深いところに生息する「アカイカ型アオリイカ」の接岸を狙う釣りなら、旅行などでもワンチャンあると思います。この場合、潮通しのよいポイントや潮汐を狙う必要があります。
アカイカ型アオリイカは大型化し、3kgオーバーも珍しくありません。
エギングに関しては、沖縄からエギング情報を配信している赤侍さんのサイトもどうぞ。
流し釣りなどの沖釣り
冬の沖釣りは天候の都合欠航となったり、風裏のポイント(東村や金武湾、名護湾)に限られる傾向がありますが、上記のジギングのほか、船を流し海底近くの獲物を狙う「流し釣り」も行われています。
シルイユと呼ばれるシロダイやハタの仲間、「ヨナバルマジク」と呼ばれるタイワンダイなどが主なターゲットとなっているようです。
沖縄の沖釣りはグルクンが有名ですが、寒い時期は深場に落ちるため一般的な釣りものではなく、また、私の遊漁船業の経験でも、水深5m~20mラインには魚がいなくなり、25m以深でようやくアタリが出てくるという感じでした。このような状況ではライトジギングか冷凍芝エビを用いた「テンヤ」で楽しめました。
また、近年人気なのはボートエギングで、リーフ廻りでのエギングのほか、水深50m前後を狙う「ディープエジング」も人気です。ターゲットは沖に生息するアカイカ型アオリイカです。
3月ごろから海水温が上がり浅瀬に魚が戻るようになりますが、旧暦2月にあたるので急激な天候変化「二月風廻り(ニングヮチカジマーイ)」の危険が増えます。これは小型低気圧がすごいスピードで通過するもので、プチ台風、春の嵐でもあるので注意が必要です
その他の釣りはどうなの?
沖縄で人気がある釣りとしては、大型の投げ竿で狙う「タマン(ハマフエフキ)釣り」や、「カーエー(ゴマアイゴ)釣り」などがありますが、タマンに関しては水温の都合、深いところに落ちている傾向があるので、水深のあるポイントを狙うなどすると釣果が上がるという話があります。私の遊漁船の経験でも、冬場は水深25mラインでアタリが出ましたので、夏場は浅瀬、冬場は深場を狙うなど狙い分けるとよいと思います。
また、冬の沖縄では夜間のイジャイ(漁り)も行われており、タコ類が多く見られるのでタコを餌にするなど、環境にマッチした餌を使うことで釣果を得られやすくなりそうです。
カーエーに関しては港や河口などで年中見られるものの、強風が邪魔をして仕掛けの操作(ウキの調整やタナとり)が難しくなるようで、いかに風の影響がないところを探すかが勝負になるようです。
また、カーエーは雑食で知られ特定の藻を食べますが、藻類は一般的に冬から春にかけて繁茂するので、藻を意識するとなおよいかもしれません。
なお、狙いを決めずに数釣りを楽しむ「五目釣り」というより初心者向けの釣りもありますが、寒さのため深場に移動してしまったり、居ても口を使わない(低水温になると捕食活動を辞めてしまう)魚が多いので、「とりあえず何でもいいから釣りたい」というのが通用しなくなってしまいます。
釣りを楽しむには「狙いを決める」「狙いの魚の習性を知る」ことが大事なのです。
とはいえ、沖縄の釣りは開拓されていない部分もありますので、寒さに負けずチャレンジしてみてはいかがでしょうか?